S-TATは、A検査において一定の作業負荷(擬似ストレス)を受検者に与え、そのもとで働く心の機能レベルを解析します。これを「仕事ぶり資質」と呼んでおり、実際の仕事における働きぶりや、その結果を左右する基本的な資質となるものです。また、環境への適応についてはストレスへの耐性となる、大変重要な資質です。
仕事ぶり資質が低いからといって、すべての職務に適性がないわけではありません。逆に、知的基礎面が低い場合であっても、職務に必要とされる能力があれば、活躍の可能性はあるはずです。
S-TATでは、「仕事ぶり資質」と「知的基礎面」の2つの側面から総合評価を表示しています。また、総合評価が同じでも、「能力バランスマップ」上における受検者の位置によって、仕事への適応の仕方が異なります。受検者の資質と職務に必要とされる力とのマッチングをはかることができます。
「能力バランスマップ」では、右上に位置する人財ほど、一般に職務遂行力が高いと言えますが、大きく分けて仕事への適応の仕方は4つの方向が考えられます。
作業負荷(擬似ストレス)をかけて反応ぶりをみる仕事ぶり資質(A)から、ストレスへの耐性力を解析します。これは、アンケート形式の適性検査や、短時間の面接だけではわからない、本人の本質的なストレス耐性と言えます。
加え、質問紙検査(C)による自己意識面「ストレスの自覚」から、現在感じているストレスの程度や感じやすさを測定します。
この、本質的なストレス耐性と、意識上のストレスの自覚のバランスを表したものが「ストレスマップ」で、現在本人がおかれているストレス状態を把握することができます。
図1に示すように、ストレスとストレス耐性の関係は、ダムの水量と堤防の関係に例えることができます。ここで言うストレスとはダムの水量、ストレス耐性が堤防にあたります。
ダムにある程度の水量(ストレス)があっても、それに耐えられるだけのしっかりした堤防(ストレス耐性)があれば、普段と変わりなく仕事をこなすことができます。
ただし、図2のようにダムの堤防が低かったり(ストレス耐性が乏しかったり)、大量の水(過度なストレス)が襲いかかってきたときは、水が堤防を乗り越えてあふれ出してしまうことがあります。すなわち、過度なストレスに耐えられず、日常の仕事にも支障をきたしやすく、ストレス症状が現れやすい状態になるのです。
この検査の土台となるA検査は、作業検査法という手法を取っています。作業検査法とは、一定の時間、一定の精神的な作業(擬似ストレス)を継続的に行わせて、その反応ぶりを解析する手法で、クレペリン検査がその代表です。
クレペリン検査では、精神作業として足し算を行いますが、S-TATは足し算だけではなく図形の認識などを付加しているため、事前に望ましい結果の想定が困難です。かつ、マークシート方式を採用しているため、作業推移(1行ごとの作業量の増減のことで、作業検査法の解析において大変重要な要素)の確認ができず、受検中の結果の操作が極めてしにくいものとなっています。